立ち読みコーナー
目次
768ページ
登場人物紹介
テス〈テッサ〉・オハラ         元夫と離婚後、ケーキ屋を経営する女性
ブロック・ルーカス           テスの恋人。アメリカ麻薬取締局。後にデンヴァー警察に異動
マーサ                 テスの子供の頃からの親友
デミアン・ヘラー            テスの元夫
オリヴィア               ブロックの元妻
リーヴァイ               ブロックの弟
エイダ                 ケーキ屋の顧客
エルヴァイラ              ホークの秘書
ホーク(ケイブ・デルガド)       特殊警備会社の経営者
グエン                 ホークの妻
ミッチ・ローソン            デンヴァー市警警部
ローラ                 ブロックの妹
ファーン                ブロックの母親
コブ                  ブロックの父親
ヘクター・チャベス           ブロックの友人
ヴァンス・クロウ            ブロックの友人
デイド・マクマナス           オリヴィアの夫
プリー                 ブロックの昔の彼女
ジョサイア・バーケット         ブリーの従兄
414ページ~
 ブロックの温かくて大きな手が、シャツをつかんでいるわたしの手に強く重ねられて、しかたなくこぶしを解くと、彼はわたしの手を平らにして自分の胸に押しあて、言った。「おい」
 わたしは唇を引き結び、目を閉じたままだった。
 彼が腕に力をこめる。
「ベイビー、おい」
 わたしは目をあけて、彼のほうを見上げた。
 わたしの目を見たその目のなかに、影がよぎった。
「おれを見るんだ」彼は優しく言った。
「見ている」わたしはささやいた。
「いや、スイートネス、しっかり見るんだ。なにが見える?」
 喉が詰まるように感じた。
「そっちに行くな。ここにおれといろ」そっと言う。わたしは息をのみ、彼は頭をさげて、わたしをもっと抱きしめた。「おれがとりのぞいた。きみはおれに渡したんだ。そこに行くな。あの重荷をまた背負うな。こっちを見ろ。おれを見るんだ。感じろ」優しくそう言って、さらに抱きすくめ、彼はわたしの手を自分の胸に強く押しあてた。「どこにいる?」
「あなたといっしょにいる」わたしは静かに言った。
「ああ、テス、きみはおれといっしょにいる」
 わたしは一瞬、彼の目を見つめて、それから目を閉じ、その胸に顔をうずめた。
 わたしの手を握っている彼の手に力がこもる。
「金はいらない」うなり声が聞こえた。目をあけて声のしたほうをふり向くと、ヴァンスが激怒した目でブロックの目を見つめていた。「貸し借りもなしだ。これはあんたの彼女のためにやる」
 わたしはショックでお腹がきゅっと締まるように感じた。ブロックのシャツを握りしめている手に思わず力が入る。
「その……」わたしは口を開きかけたが、ふたりとも席を立った。
「彼女と子供たちに気をつけてやれ」ヴァンスが言った。「おれたちは仕事にとりかかる」
 そんな。
 驚いた。
 わたしはふたりのことをまったく知らない。ホットな男たちだということ以外は。でもいい人だとわかった。
「恩に着る」ブロックがつぶやくように言った。
 ふたりはブロックから目を離して、わたしを見た。
「テス、次はもっと愉しいときに会えたらいいな」ヴァンスが言った。
 わたしもそう思う。
「ありがとう」わたしはささやいた。