立ち読みコーナー
目次
672ページ
登場人物紹介
ニコラス・ドラモンド         FBI特別捜査官。特別チーム〈闇の目〉を率いる英国貴族
マイク・ケイン            FBI特別捜査官。〈闇の目〉メンバー。ニコラスの相棒で恋人
ベン・ヒューストン          FBI特別捜査官。〈闇の目〉メンバー
グレイ・ワートソン          FBI特別捜査官。〈闇の目〉メンバー
ルイーザ・バリー           FBI特別捜査官。〈闇の目〉メンバー
リア・スコット            FBI特別捜査官。〈闇の目〉メンバー
ロバート・クランシー         FBI専属パイロット
キンバリー・トライデント       FBI専属パイロット
アダム・ピアー            天才ハッカー
フォックス/キツネ          世界一の腕を持つ泥棒。ニコラスとマイクのふたりとは旧知
グラント・ソーントン         フォックスの夫。英国王の元護衛兵
カサンドラ・コハテ          ジェネシス・グループの共同代表
エイジャクス・コハテ         ジェネシス・グループの共同代表。カサンドラの双子の兄
ジェイソン・コハテ          コハテ兄妹の祖父
ヘレン・コハテ・メインズ       コハテ兄妹の母親
ディヴィッド・メインズ        コハテ兄妹の父親
アップルトン・コハテ         コハテ兄妹の高祖父
リリス・フォレスター・クラーク    ジェネシス・グループの業務責任者。殺し屋
エリザベス・セント・ジャーメイン   アップルトン・コハテの伝記作家
メリンダ・セント・ジャーメイン    エリザベスの娘
マイロ・ザッカリー          FBI特別捜査官。ニコラスとマイクの上司 
レーシー・シャーロック        FBI特別捜査官
ディロン・サビッチ          FBI特別捜査官
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 マイクは言った。「部屋は申し分ありません。その話をしにきたんじゃないんです。信頼できる情報源から、このゴビ砂漠から北京に襲いかかった巨大な砂嵐は自然災害ではないとの知らせを受けました」深呼吸する。「人工的に発生させたものだそうです」
 ザッカリーとサビッチは、ぴたりと動きを止めた。
 ザッカリーがかぶりを振りはじめた。「冗談だろう?」
「いいえ、冗談ではありません」ニコラスが言った。
 サビッチが興味津々でソファの上で身を乗り出した。「人工的に発生させた? たしかに、昔から多くの科学者が気象の制御について研究してきた。現在では人工降雨は数十億ドル規模の産業になっている。先週もカリフォルニアの旱魃(かんばつ)をなんとかするために、人工降雨の話が持ちあがったばかりだ。霧を発生させて一帯を冷却すると、樹木が枯れるのを防ぐ一助になる。気象制御はとくに目新しい話ではないよ。むしろ世界的に実用化されている」
 ザッカリーが言った。「だが、北京で何千人もの命を奪うほど大規模な砂嵐を発生させられるものか? ニュースは聞いただろう——内陸のハリケーンのようなものと言っていた。ただし、雨やトルネードではなく、砂のハリケーンだ。そんなものを発生させることが可能だとして、だれが得するんだ? 意味がないだろう」
 サビッチはしばしほかの三人を見つめ、おもむろに尋ねた。「信頼できる情報源から人工の砂嵐だと聞いたそうだが。その情報源とはだれだ?」
 ニコラスが答えた。「キツネです」
 ザッカリーが訊き返した。「ヴィクトワール・クヴレル、またの名をフォックス。あのキツネか? メトロポリタン美術館を爆破しようとしたキツネ? きみたちを殺そうとしたキツネ? あれが?」
 マイクが言った。「まさにそのキツネです。ジュネーヴでニコラスを爆死させようとしたキツネですよ。それにくらべればメトロポリタン美術館の爆弾なんか小さくて、簡単に信管を抜けるものだったわ。キツネは今回、わたしたちに取引を持ちかけてきたんです。わたしたちがこの人工の砂嵐を発生させている者を捜し出すのに協力するかわりに、わたしたちに彼女の命を助けろと」
「——それから、彼女の夫の命も」
「わかった」サビッチが言った。「おしゃべりはもう充分だ。今回キツネはなにを盗んだせいでトラブルに巻きこまれることになったんだ?」
「トプカプ宮殿からアロンの杖を盗んだんです」
「冗談はよせ」ザッカリーが言った。
 マイクは答えた。「いいえ。これは現時点では、コ・イ・ヌール事件以来最大の歴史的遺物盗難事件です。コ・イ・ヌール事件同様、われわれなら杖を奪還できると確信しています。想像してください、達成すればFBIの信用度はますます高まる。トプカプに杖を返還できれば、トルコとも友好関係を結びなおすことができる。それに、もしかしたら、ほんとうにもしかしたらですが、杖を奪還する過程で、あの伝説の聖櫃を発見できるかもしれない。杖は聖櫃のなかにあるとされています。ありえないことではありませんよ」
 ザッカリーがかぶりを振った。「きみたちはFBI捜査官だ、インディ・ジョーンズではない」