立ち読みコーナー
目次
608ページ
登場人物紹介
アイリーン・グラッソン     本名アナ・ハリス。ゴシップ紙「ウィスパーズ」の記者
オリヴァー・ウォード      バーニング・コーヴ・ホテルのオーナー。元有名マジシャン
ヘレン・スペンサー       アナの元雇用者。ニューヨーク社交界の花形
ヴェルマ・ランカスター     「ウィスパー」紙編集長
ニック・トレメイン       ハリウッドの人気新進スター
クローディア・ピクトン     ニックの付き人
チェスター           オリヴァーのおじ。発明家
ルーサー・ペル         パラダイス・クラブの支配人
ウィリ             バーニング・コーヴ・ホテルのバーの女性バーテンダー
グレアム・エンライト      エンライト&エンライト法律事務所の所長
ジュリアン・エンライト     グレアムの息子
ライナ・クラーク        グレアムの秘書
アーネスト・オグデン      映画スタジオの重役
マカリスタ           別名ハリウッド・マック。汚れ仕事を請け負う人物
ペギー・ハケット        女性記者
グロリア・メイトランド     女優志望の女性
デイジー・ジェニングズ     女優志望の女性
ブランドン刑事         バーニング・コーヴ警察の刑事。
ヘンリー・オークス       ニック・トレメインのファン。
374ページ~
 アイリーンが目をしばたたいたあと、おそるおそる手のひらをその部分におおいかぶせた。ためらいがちに用心深く彼を探る手からは自信のなさが伝わってくる。オリヴァーがうめいた。
 アイリーンがとっさに手を引っこめた。
「いけなかった?」不安げに尋ねる。
「アイリーン」オリヴァーが歯をくいしばったまま言った。「こういうこと、したことがないわけではないだろう?」
「ええ、まあ、何度かは。でも、わたし、あんまり上手じゃないんだと思うの」
「失神しそうだ」
「えっ?」アイリーンが驚き、素早く上体を起こした。「横になって」
「横になっているよ」
「冷湿布を取ってきたほうがいいかしら?」
「そんなものは役に立たないと思う」
「お医者さまを呼ぶ?」
 アイリーンがブラウスに手を伸ばした。
「医者など必要ない」オリヴァーがまた彼女の手をつかみ、彼の胸のてっぺんにそっと引き寄せた。「必要なのはきみだ。教えてくれ。前にこういうことをしたとき、何がどううまくいかなかったのか」
「その男が嘘つきで、浮気者だったの」