立ち読みコーナー
目次
848ページ
登場人物紹介
マーラ(マラベル)・ジョリーン・ハノーヴァー     〈ピアソンズ・マットレス&ベッド〉販売員
ミッチ・ローソン                   マーラの隣人。刑事
デレクとラタニア                   マーラの隣人のカップル
ブレントとブレイダン                 マーラの隣人のゲイ・カップル
エルヴァイラ                     ラタニアの従姉
グエン                        エルヴァイラの友人
カム                         エルヴァイラの友人
トレイシー                      エルヴァイラの友人
ビル                         マーラの従兄。ちんぴら
ビリー                        ビルの息子
ビリィ(ビレリーナ)                 ビルの娘
“トレーラー・トラッシュ・ツインズ”          マーラの母親と伯母。アイオワ在住
スリム(ブロック・ルーカス)             刑事。ミッチのパートナー
ホーク(ケイブ・デルガド)              グエンの夫。特殊警備会社経営
タック(ケイン・アレン)               バイカーグループ〈カオス〉の首領
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「見て、マーラおばちゃん! 見て、見て、見て!」ビリィが叫び、レジ袋のなかをがさがさとひっかきまわした。お目あてのものを見つけて、こちらを見る。両手を高くあげる。その手にもっているプラスチックのなにかから、ものすごくガーリーなヘアゴムがぶらさがっている。どうやらプラスチックは蝶々のようだ。片手にそれを、もう片方の手にはおなじくらいガーリーなバレッタを握りしめている。バレッタのほうはハートと星つきで。「ミッチが蝶々を買ってくれたの!」ビリィは金切り声をあげた。
 超セクシーで、超ゴージャスで、超マッチョなミッチ・ローソン刑事がガーリーな髪留めを買うところを想像して、わたしはあいた口がふさがらなかった。超セクシーで、超ゴージャスで、超マッチョなミッチ・ローソン刑事を見ると、彼はレジ袋を朝食用カウンターに置いたところだった。
 彼がこちらを向く前に、なんとかショックを隠した。
「シャンプーも買ってくれたんでしょうね」彼に言った。
 彼は目に笑みを浮かべて、なにか言おうと口を開いたが、そのときビリィが髪留めを放りだして、また袋のなかをごそごそやりはじめた。ひとつひとつ取りだすたびに、わたしに説明してくれた。「ミッチはあたしには女の子用シャンプーを、ビリーには男の子用シャンプーを買ってくれたの。それからビリーに新しいジーンズと、あたしにジーンズのスカートを買ってくれて、スカートは下のところにピンクのひらひらがついてるの!」ビリィは興奮して叫び、さらに続けた。「お花がついてるピンク色のTシャツといっしょに着るの」彼女はTシャツを出して、わたしのほうを見ると、斜めにからだの前にあててみせ、曲がった笑顔を見せた。「かわいいでしょ?」
 かわいかった。すごく似合っていた。それに、女の子用シャンプーと男の子用シャンプーがあるなんて、わたしは知らなかった。シャンプーはシャンプーだ。ちがうの?
 わたしはミッチに視線を戻した。彼は居間と台所を分けているカウンターにもたれ、にこにことビリィを見つめていた。
 どうしよう。
「すごくかわいいわ」わたしが言うと、ビリィはTシャツを肌に移植せんばかりにぴたりと押しつけ、身を乗りだして言った。「そうだと思った!」そしてまた、袋のほうを向いた。