立ち読みコーナー
目次
720ページ
登場人物
グエンドリン(グエン)・パイパー・キッド     フリーランスの編集者
ジンジャー・ペネロピ・キッド           グエンの異母妹
カミーユ(カム)・アントワン           グエンの友人。警察署通信指令係
レオナルド(レオ)・フリーマン          カミーユの同棲相手。警察官
トレイシー・リッチモンド             グエンの友人。売れっ子販売員
トロイ・ラフリン                 グエンの男友だち。銀行員
ホーク(ケイブ・デルガド)            元軍人。特殊警備会社を経営
タック(ケイン・アレン)             バイカーグループ〈カオス〉の頭
ミッチ・ローソン                 刑事
ダーラ                      ジンジャーの友だち
バクスター・キッド                グエンの父親
メレディス・キッド                グエンの継母
オーガスティン・デルガド             ホークの父親
マリア・デルガド                 ホークの母親
エルヴァイラ                   ホークの会社の秘書 
101ページ~
「よく眠れたかい?」ローソンが尋ねた。
「あんまり」わたしは正直に答えた。
「それならいい方法を知ってる」タックが口をはさんだ。残るふたりが彼のほうを向き、わたしもそれにならった。タックは腕組みをして、笑みを浮かべている。
 ああもう! 
 この時点でホークの忍耐は底をついた。
 わたしにはわかった。というのも、彼はまずタックを、つづいてローソンを指差し、こう言ったからだ。「おまえと……おまえ、話がある」
 地球上で、このふたりを相手にこんな態度をとっても許されるのはおそらくホークだけだろう。
 彼は一歩下がり、ローソンとタックも動いた。ドアから離れてしめるために、わたしも動いた。ドアのしまるバタンという音が響いたとき、ローソン、タックを連れて芝生の上を歩いていたホークがこちらをふり返った。
「ベイブ、待ってろ(ステイ)」
 わたしはサングラスのなかで目をぱちくりさせた。
 無性に腹が立ってきた。
「わたしは犬じゃないわ!」大声で怒鳴った。
 次の瞬間、一・五メートル先にいたはずの彼に、背中を車に押しつけられていた。
「動かないと約束するか、おれの車のハンドルに手錠でつながれるか。二秒で好きなほうを選べ」
 やっぱり思ったとおりだった。だれかさんにとっては、上機嫌な朝ではないらしい。
「ここには警察官がいるのよ。あなたがわたしを車のハンドルに手錠でつないだら、渋い顔をすると思うけど」念のため、知らせておいた。
「ローソンはおれを知っている。タックも。いいか、スイートピー、おれは自分の女に言うことを聞かせるのに必要ならどんなことでもする。それでもこの庭にいる男はだれひとり、きみを助けたりしない」
 この発言の信憑性はともかく、彼の言い方で、じっさいに試そうなどと思わないほうがいいとわかった。すでにあたりにはじゅうぶんな緊張感がみなぎっている。自分ちの庭でコマンドー対バイカーの紛争が勃発し、ローソン率いる警察がその仲介に入るような事態は、できれば避けたい。
 しかたなくここは譲ることにしたが、なんの反撃もせずに引きさがるわけにはいかない。
「あなたはたったいま、“いい男メーター”で2レベル下がったわよ」つんと澄まして言ってやった。
「どうってことない」彼は言い返し、背を向けた。
 ローソンとタックはわたしとホークの様子を眺めながらじっと待っていた。ホークは彼らのほうへ歩いていく。わたしは自分の車のボンネットにお尻を乗せ、腕組みをした。
 バイカーもコマンドーも、みんなわたしを見て、それからマッチョでワルな男三人に視線を移した。わたしは三人のセクシーな男たちの話し合いを眺めていた。三人とも表情は険しく、ぜったい視線をそらすまいとにらみ合っている。サングラスとサングラスがガチで見つめ合う。緊張みなぎる話し合いはわずか三分で終わった。計っていたわけじゃないけど、もっと短かったかもしれない。