立ち読みコーナー
目次
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登場人物紹介
タリア・レノックス           スキャンダルで社交界を追われた女性
レオポルド(レオ)・バイロン      クライボーン公爵家の五男
ローレンス               レオの双子の弟
ゴードン・ケンプ            貴族。タリアの元夫
エドワード(ネッド)          クライボーン公爵。レオの長兄
ケイド                 レオの兄
ジャック(ジョン)           レオの兄
ドレーク                レオの兄
マロリー                レオの姉
エズメ                 レオの妹
フレッチャー              タリアの執事
パーカー                タリアの侍女
ミセス・グローブ            タリアの料理人
マチルダ(ティリー)・キャスカート   タリアの友人
ジェイン・フロスト           タリアの友人
ホランド卿               タリアをパーティに招待した男爵
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タリアはソファでまどろみながら、そろそろレオと別れなければと考えていた。レオが帰ったら、メイドの手を借りてベッドに横になればいい。あと少ししたら、レオに呼び鈴を鳴らしてもらおう。
 次の瞬間、二本の力強い腕が体の下に差しこまれた。タリアははっとした。「レオ?」
「寝ててくれ」レオはブランデーのようになめらかで深みのある声でささやき、タリアを抱きかかえようとした。
「自分でできる――」
「大変だろう。いいからぼくにまかせて」レオは背筋を伸ばし、タリアをしっかり抱いた。
「でも腕が――」
「だいじょうぶだ。もうぜんぜん痛くない」
 タリアは疑わしく思ったが、レオはそのまま寝室に向かった。あまりにくたびれていて、タリアはそれ以上、反論する気力がなかった。それにいけないことだとわかっていても、彼にこうして抱かれていると、とても満ち足りた気分になる。
 目を閉じてやわらかなウールの上着に頰を押しつけ、リネンの糊のにおいと、さわやかな男性のにおいを吸いこんだ。レオのにおいだ。
 寝室の暖炉も赤々と燃え、ベッドのシーツと上掛けがはいであった。レオは部屋を横切り、タリアをそっとマットレスの上に横たえた。
 羽毛のマットレスに身を沈め、ふかふかのふたつの羽枕に頭を乗せると、タリアは満足感から思わずため息をつきそうになった。
 そして数秒後、ぱっちり目をあけた。レオがネグリジェのすそから手を入れ、ふくらはぎに触れている。
 タリアはレオを見た。
「足首を長枕の上に置こうと思って」レオは言った。「まだかなり腫れているから、足首を高くしておいたほうがいい」
 そうだ、自分はねんざしたのだ。
 心身ともにくつろぎ、けがのことを半分忘れていた。それとも彼の存在を意識するあまり、痛みを感じる余裕がないのだろうか。
 タリアの心臓がひとつ大きく打った。枕の上に足を乗せたのに、レオはまだふくらはぎから手を離さない。
「これでいいかな」
「ええ」タリアは胸の鼓動が鎮まることを願ったが、それは速くなる一方だった。
「ほかに必要なものはあるかい。水か毛布は?」
 タリアは首をふった。「なにもいらないわ」
「そろそろ帰るよ」
「そうね」タリアは急に息が苦しくなった。
 だがレオはその場を動こうとせず、タリアも黙っていた。
「おやすみ。ゆっくり休んでくれ」
 タリアは唇を開いた。「ええ」
 レオの手が離れたとたん、タリアは寂しさを覚え、そんな自分を愚かだと思った。
 レオは無言で上掛けを引きあげてタリアの体をくるんだ。そして頭の両脇に手をつき、その顔をのぞきこんだ。「きみがけがをしてなかったら、今夜は帰らないのに」
 タリアはレオを見つめかえした。「もしけがをしていなかったら」蚊の鳴くような声で言う。「あなたを引きとめていたわ」
 レオの瞳の奥に燃えあがる炎が見えた。
 タリアはごくりとのどを鳴らし、今夜の自分はどうしたのだろうと考えた。いまのことばは本心から出たのだろうか、それともブランデーが言わせたのだろうか。
 でもその答えは、レオを寝室に入れたときからわかっていた。けがをしていようがいまいが、ほんとうにいやだったら断わっていたはずだ。
「後ろ髪を引かれる思いだよ」レオはタリアを見おろして言った。「でも今夜はおやすみのキスで我慢する。あとはねんざがよくなってからのお楽しみだ」
 タリアは自分もそれを楽しみにしていることに気づいた。
 そのとき、レオがいきなり唇を重ねてきた。甘く情熱的なキスをされ、タリアは陶然とした。彼がもっと熱いくちづけで応えるように求めている。
 タリアは夢中でキスを返し、うながされるまま唇を開いて舌を招きいれた。舌と舌をからませて濃厚なキスをすると、肌がぞくぞくし、快感が稲妻のように全身を貫いた。
 嵐にも似た激しい欲望が体を包んでいる。タリアは無意識のうちにレオの黄金色の髪に手を差しこんだ。シルクのようになめらかな髪だ。
 これは現実だろうか。もしかすると自分はまだ眠っていて、夢を見ているのかもしれない。
 レオがベッドに腰をおろした。ほんの数分前にかけたばかりの上掛けが、ひざのあたりまでめくれている。あっというまにガウンのベルトがほどかれ、ネグリジェのボタンがはずされた。頰やあごや感じやすいのどにキスの雨が降っている。
 レオの髪に差しこんだタリアの手に、ぐっと力がはいった。彼が肩や首筋にくちづけたかと思うと、乳房のあいだに顔をうずめた。
 タリアはいままで感じたことのない欲望に身もだえした。
 レオが顔をあげ、ぎらぎらした目でタリアを見た。「きみは最高だ」
 そう言うと目と目を合わせたまま、ピンクの乳首にくちづけ、舌で円を描くように愛撫した。それからそっと息を吹きかけると、今度は硬くなった先端を軽く嚙んだ。
 タリアは体を震わせた。唇と舌と歯で何度もくり返し愛撫され、頭がどうにかなりそうだ。
 やがてレオは反対側の乳房に顔を移し、さっきと同じ甘い拷問を与えた。あまりの悦びに、タリアは体がひきちぎれそうな感覚を覚えた。
 もうこれ以上、我慢できないと思ったそのとき、レオが手のひらで乳房を包んだ。のどの奥で満足げに低くうなりながら、大きく口をあけて先端を吸った。
 電流のような快感がタリアの体を駆けぬけ、脚のあいだがしっとり濡れた。ゴードンからはいつも氷を抱いているようだと言われていたのに、いまは全身が熱く燃えている。
 でももうやめなければ。ただのおやすみのキスのはずだったのに、こんなに官能的な抱擁を交わしているなんて。早くしないと手遅れになる。
 だが自分を奮い立たせてレオを押しかえそうとしたとき、ふたたび唇をふさがれた。息の止まるような濃密なキスをされ、かろうじて残っていた理性が吹き飛んだ。
 タリアは恍惚とした。彼が敏感になった乳房をさすりながら、口や鼻、頰や額やあごにくちづけている。
 蜂が花の蜜を吸うように、レオが舌を耳に入れ、それから耳たぶを軽く嚙んで言った。「じっとしてるんだ」
 タリアは頭がぼうっとし、ただうなずくことしかできなかった。
 レオが片方の手をネグリジェの下からそっと差しこんできた。ふくらはぎからひざ、太ももへとなであげる。左右の太もものあいだでいったん手を止めてから、秘められた部分へと進んだ。
 タリアはぱっと目をあけ、ネグリジェの薄いウールの生地越しにその手をつかんだ。「レオ卿」
「なんだい、レディ・タリア」レオは微笑んだ。「この状況に堅苦しい呼びかたはふさわしくないと思うけど」
「や――やめて」
「やめてほしい? ほんとうに?」レオは唇を重ね、タリアの情熱を燃えあがらせた。
 くちづけているあいだもずっと手を動かし、彼女の大切な部分を手のひらのつけ根でさすった。「いいから動かないでくれ。きみに痛い思いをさせたくない」ふたたびキスをする。「少なくとも、痛いだけの思いは」
 タリアは身震いし、なぜこんなことになったのだろうと考えた。そのときしっとり濡れた部分をなでられ、なにも考えられなくなった。レオはキスをしながら指での愛撫をつづけた。
 タリアはまぶたを閉じ、この状況を終わらせるための力をかき集めようとした。
 でもそれは無駄なことだった。これほどの悦びにどうしてあらがえるだろう。ため息をついて手の力を抜き、されるがままになった。
 レオはやさしくタリアの太ももを開き、けがをしていないほうの脚を少しだけ上に曲げた。敏感な肌に触れるか触れないかのところで指を動かすと、体の奥からさらに熱いものがあふれてきた。タリアは両の手をぎゅっとこぶしに握り、容赦なくつづく官能的な拷問に耐えた。
 知らず知らずのうちに脚を開き、また彼の手をつかんだ。だが今度は止めるのではなく、自分のほうへ引き寄せた。
「お願い、さわって」
「さわってるじゃないか」レオはいたぶるように手を動かし、タリアを身もだえさせた。
「ほら、だめだよ」やさしくささやいた。「動かないでと言っただろう。足首をねんざしてるんだから」
 タリアはけがのことなどすっかり忘れていた。彼の愛撫があまりに素敵で、それ以外のことは頭から消えている。
 唇を嚙み、体を動かしたくなるのをこらえた。
「いい子だ。ご褒美をあげよう」
 レオは花びらに触れるように彼女の濡れた部分をゆっくり開き、長い指を一本、なかに入れた。まず第一関節まで、それから根元まで差しこんだ。
 タリアののどから悲鳴にも似た声がもれた。内側の筋肉が彼の指を歓迎するように包んでいる。
 でもこれだけでは足りない。
 もっと欲しい――そして彼はそのことをわかっている。
 ファウストを誘惑した悪魔のような笑みを浮かべながら、レオはタリアの顔をながめた。
 なかに入れた指を動かし、内側の肌をさすった。いったん引き抜いてからまた差しいれ、彼女をさいなんだ。
 タリアの胸の先端がつんととがってうずいた。そのことに気づいたかのように、レオがあいたのほうの手を伸ばして親指と人差し指で硬いつぼみをつまみ、もう一方の手を脚のあいだで動かした。
 なんの前触れもなく、もう一本指を入れて彼女を満たした。
「ああ、神様!」タリアは叫んだ。自分の中心を貫いている彼の指以外、すべてが世界から消えていく。レオがまた胸の先端を指先でつまみ、それから乳房を手のひらで包んだ。彼女の芯を指でいたぶりながら、もう片方の乳房にも同じことをする。
 そして二本の指に加えて、敏感な場所に親指を差しこんだ。
 次の瞬間、タリアは絶頂に達した。悦びが波となって押し寄せ、体を吞みこんでいく。頭が真っ白になり、ただ快楽の波間をただよった。
 それから気を失った。