立ち読みコーナー
目次
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登場人物紹介
オリヴィア(リヴ)・サザランド     ミネアポリス警察殺人課刑事
デイヴィッド・ハンター         消防士
ケイン                 殺人課刑事。オリヴィアのパートナー
ジェフ・ゾルナー            消防士。デイヴィッドの相棒
アンガス・クローフォード        FBI特別捜査官
グレン・レッドマン           デイヴィッドのアパートメント・ハウスの住人
フィービー・ハンター          デイヴィッドの母
トム                  デイヴィッドの甥。大学生
カービー                サンドイッチ店〈デリ〉店長
オースティン・デント          放火を目撃した少年。聾学校の生徒
ケニー・レイセム            オースティンのルームメイト。聾学校の同級生
ジョエル・フィッシャー         放火犯の大学生四人組
メアリ                 放火犯の大学生四人組
エリック・マーシュ           放火犯の大学生四人組
アルベール               放火犯の大学生四人組
プレストン・モス            環境保護団体〈SPOT〉の象徴的リーダー
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「息をするよりもきみが欲しい」
「まあ」ことばというよりも吐息だった。目が閉じられ、部屋中の空気がなくなってしまったかのように胸が浅い息で上下した。どちらから動いたのかデイヴィッドにはわからなかったが、どうでもよかった。オリヴィアの腕が首にまわされ、唇が激しい勢いで重ねられた。彼女の口も開けられ、デイヴィッドに負けないくらいの激しさと熱さで応えた。
 デイヴィッドは両手をあちこちにさまよわせた。彼女の背中、胸、自分のために作られたかのようにぴったりくる丸い尻。「きみの望みは?」なんとか声を絞り出す。
「あなたよ」そのことばを強調するように激しくキスをしてくる。「いますぐ。お願い」
 こんなのは止めなければ。彼女は話したがっていたのだ。答えを必要としていたのだ。けれど、命が懸かっていても止められそうになかった。スカートをめくって脚をなで上げていき、シルクから素肌へと移動するとうめき声が漏れた。彼女は本物のストッキングを穿いていた。「ジッパーはどこだい?」ざらついた声で言いながら、彼女の背中を探る。
「ジッパーはないわ」彼女の両手はデイヴィッドのシャツのボタンをはずすので忙しかった。「ただ……脱がしてくれればいいの」
 服を頭から脱がせて、そのまま落とした。それから見入った。シルクとレースは体をほとんど隠していなかった。申し訳程度の小さなTバックに視線が落ちる。とても、とても小さいものだった。心臓が破裂しそうだった。体の別の部分は確実に破裂すると思った。ソファに目をやり、それにそそられたが、オリヴィアに指で唇をとんとんと叩かれた。
「言ったわよね」彼女のかすれた声を聞き、頭の血が一滴残らずさあっとどこかへ行ってしまった。「したいことをするには、もっと場所が必要だって」彼女がデイヴィッドのシャツを肩から落とし、唇をかすめるように合わせながら素肌に手を這わせた。「わたしのために。わたしのなかで。ソファはだめよ、デイヴィッド」
 彼は死にそうだった。「わかった」うなるように言ってオリヴィアを抱き上げ、脚を腰に巻きつけさせた。ベッドルームに向かって二歩進んでレース越しに胸を口にふくむと、彼女がたおやかで美しい体を弓なりに反らした。その場で立ち止まると激しく吸ってあえぎ声を引き出し、その声を愛おしんだ。もう一度その声を聞きたくて、反対側の胸も口にふくんだ。
「急いで」オリヴィアが急かす。「お願い。お願いよ」
 必死の懇願を聞いて、デイヴィッドは彼女をベッドに下ろしてからちっぽけなパンティを力任せに脱がせ、それと同時に靴も脱がせた。オリヴィアが息を吸う間もなくおおいかぶさり、記憶にあるとおりのうめき声を聞いた。
 彼女は……おぼえているままの味がした。そして、これもまたおぼえているとおりに、彼女が髪に手を突っこんで引き寄せた。「お願い、お願いよ」オリヴィアはまたそのことばをくり返し、もっととねだり、デイヴィッドがそうするという確信がないのか、ここで奪ってと懇願した。
 だからデイヴィッドは吸い、ついばみ、なめた。そして舌を深く差し入れると、オリヴィアの体がぴんと張り詰め、頭がのけぞり、喉から苦しそうな叫び声が出た。あまりに激しい絶頂に、デイヴィッドが驚いたほどだった。
 それでも彼はやめなかった。やめられなかった。オリヴィアが身震いをしながら彼の名前を口にした。
 デイヴィッドはひざをつき、彼女を見つめた。体は激しくうずいていた。「オリヴィア、おれを見て」
 オリヴィアはまぶたを震わせ、ようやく目を開けた。ぼうっとしているようすは美しかった。
 頭の両脇に手をついて顔を寄せる。「きみのことを考えている。きみだけを。きみひとりだけだ。オリヴィア」
 彼女は長いあいだデイヴィッドを見つめていた。それから口角を上げた。「あなた、まだ服を着たままじゃないの」
 彼女が伸ばしてきた手をデイヴィッドは手首のところでつかみ、指をからめ合わせた。「きみに触れられたら、果ててしまいそうだ」
「そうしてほしいの。どうしても」
「おれもそうしたい。だが、三〇秒で終わりにはしたくないんだ。ちょっと時間をくれ」デイヴィッドは彼女と額をくっつけた。「きみの味を夢見てきた。現実は夢よりもよかった」
 オリヴィアが体をすり寄せてきた。「デイヴィッド、お願い」
 彼はオリヴィアを放し、触れられる前に離れた。片方ずつゆっくりとストッキングを脱がせてから、ベッド脇に立ってシャツを脱ぐ。「ブラジャーを取って」
 彼女は上半身を起こし、ほとんど胸をおおっていない薄いレースのホックをはずした。肩紐が下へとすべり落ちると、デイヴィッドは不意に息ができなくなった。
「きれいだ」
 オリヴィアは彼のベルトに伸ばした自分の手に視線を落とした。「あなたもよ」
 彼ははっとした。オリヴィアがベッドの端にひざをつき、下を向いたままズボンのボタンに手を伸ばした。その手に手を重ねて止める。「だめだ。おれを見て、オリヴィア」
 彼女が顔を上げて目を合わせた。「なにがいけないの?」
「なにも。なにもかも」やさしく彼女の顔を包む。「どうしておれがここにいると思う?」
「息をするよりもわたしが欲しいからでしょう」
「それは、きみがきれいだからだ。きみを頭のなかから追い払えないんだ、オリヴィア。何カ月も何年もがんばってみたが、だめだった。だれと過ごしてもむだだった。話をしていたときのきみの目を思い出し、微笑んだときのきみの顔を思い出していた」
 彼女の目のなかでなにかが変化し、ことばだけではけっして納得してもらえないのがデイヴィッドにはわかった。ズボンとボクサー・パンツを床に落とし、彼女が目を丸くしてまた熱いまなざしになると、満足の波に襲われた。
 彼女が指先で彼のものをなぞり、それから両手を脇に這わせて尻をつかんだ。この先がどうなるかはわかっていたものの、実際に濡れて温かな彼女の口にふくまれたときの衝撃に対する心の準備はできていなかった。信じられないほどすばらしかった。頭がのけぞり、目が閉じ、胸の奥からしわがれた声が出た。
 天国だった。だが、こんな風に絶頂に達したくはなかった。今夜は。
「やめてくれ」ありったけの意志の力をかき集め、彼女の髪に手を差し入れて顔が見えるように遠ざけた。「きみに。きみのために」彼女の体を引っ張り起こして唇を重ね、首に腕がまわされ胸を押しつけられてキスを返されると、激しい満足を感じた。「きみのなかで」手探りでベッド脇の引き出しからコンドームをつかみ出す。「きみのなかに入りたい」
「だったら急いで」オリヴィアがささやき、自分と一緒に彼をベッドに引き倒した。彼女がか弱そうだなんてとんでもない。オリヴィアが包みを奪ってかぶせはじめると、デイヴィッドは歯を食いしばった。彼女の手に触れられて、炎になめられたように感じた。