立ち読みコーナー
目次
816ページ
登場人物紹介
リリー・パー              医師の娘
ブルーノ・ラニエリ           会社経営者
ケヴ・マクラウド            ブルーノと一緒に育った男性。マクラウド兄弟の四男
エディ・パリッシュ           ケヴの婚約者
ショーン・マクラウド          ケヴの双子の兄。マクラウド兄弟の三男
リヴ・マクラウド            ショーンの妻
デイビー・マクラウド          ケヴの兄。マクラウド兄弟の長男
コナー・マクラウド           ケヴの兄。マクラウド兄弟の次男
ヴァル・ヤノシュ            マクラウド兄弟の友人
タマラ・スティール           ヴァルの妻
ハワード・パー             リリーの父親。不妊治療の専門医
ニール・キング             完全な人間を作り出そうとしている男
ゾーイ                 キングのプログラムを修了した女性
マイケル・ラニエリ           マフィアの一味。キングの取引相手
マグダ・ラニエリ            ブルーノの母親。故人
ルディ                 マグダの恋人
トニー・ラニエリ            ブルーノの大叔父。故人
ローザ・ラニエリ            トニーの妹。ブルーノの大叔母。マイケルのまたいとこ
サム・ピートリー            刑事
130ページ~
 リリーが緊張をゆるめかけたとき、ブルーノがひざまずいた。彼女はふたたびパニックに襲われた。彼の熱い息がへそをくすぐる。ブルーノの手がリリーのヒップをつかんだ。
「何をしているの?」彼女は甲高い声できいた。
 ブルーノがTバックに小指を引っかけて引っ張った。「これを」
 ああ、それね。自分が彼に求め、指示したのに、今になって怯えているとは。
 ブルーノがTバックをおろすと、リリーは身を震わせた。しっかり閉じた腿のあいだでTバックがとまる。
「本当に大丈夫なのか?」彼が問いかけるようにTバックを引っ張った。
 急に怒りがこみあげてきた。大丈夫か、ですって? どういう意味? めちゃくちゃになってしまったわたしの人生が、また大丈夫と言える状態に戻るとでもいうの? でも、それはブルーノのせいではない。
 今やめられるのは死ぬほどつらい。「大丈夫よ」声をしぼりだすようにしてリリーは答えた。
「じゃあ、力を抜くんだ」彼がやさしく言った。
 簡単なことみたいに言うのね。ブルーノが彼女の腿をゆっくりとさすった。リリーは彼のたくましい肩につかまると、腿の力を抜いた。ついにTバックが下まで落ちた。
 ブルーノは彼女の足首を順にあげて脱がせると、そのTバックを自分の顔の前まであげ、目に笑みをたたえながら息を吸いこんだ。それからリリーのへそに顔をあてて鼻をすりつける。そのまま下に移動し、口が秘所にあたるところでとまった。規則正しい彼の呼吸がやさしい愛撫になる。「きみを感じさせたい」
 リリーは笑おうとしたが、声がつまった。「楽しみにしているわ」
「違う、今すぐにだ。口で」リラックスさせるように腿の両脇を撫(な)でながらブルーノが言う。
 彼女は咳払いをした。「今はいや。あとがいいわ。あなたが上手なら」
「とてもうまいぞ」彼の声がリリーの脚のつけ根を震わせる。
 ブルーノはリリーをソファに座らせ、脚のあいだに滑りこんで彼女の頭を引き寄せた。キスをするために。
 リリーはあわてて顔を離した。「だめよ!」
 ブルーノが体を引いた。ハロゲンヒーターを背にした薄暗がりのなかでその表情は見えないが、とまどいといらだちが波となって彼から伝わってくる。「いったいどうした?」
 また涙が出そうだった。口をきくのが怖い。リリーは激しくまばたきをしながら首を振った。キスをしたら、すべてががらがらと崩れてしまいそうな気がする。
「前戯やキスがいやなのか? 何をしたいんだ?」
 ブルーノは怒っている。でも彼を責めることはできない。リリーは自分に腹が立った。「それを消して」ヒーターをさして言う。「明るすぎるわ」
「明るくて何が悪いんだ? 誰から隠れている? 凍えてしまうぞ」
「凍えたりしないわ」それどころか熱っぽかった。今にも燃えあがりそうだ。
 ブルーノがヒーターのスイッチを乱暴に切った。明かりが消え、暗いグレーの影が広がる。彼が立ちあがった。
 ブルーノが逃げてしまうのではないかと心配になり、リリーはその手をつかんだ。「どこに行くの?」
「ヒーターがいやだと言うなら毛布が必要だ。それに、ソファのスプリングが飛びでているところがある。きみの体に引っかき傷をつくりたくないからね」
 熱を発してくれていたブルーノがいなくなるととても寒かったが、彼はすぐに毛布を抱えて戻ってきた。そして、ソファの背と座面を覆うように広げた。
 ブルーノがリリーに座るよう身振りで示した。まるで、不安を感じさせる夢を見ているみたいだ。ストッキング以外は何も身につけていない自分の前に、燃えたぎるマグマのようにセクシーな男性がいる。口論をして気まずい雰囲気になった相手が、闇のなかで自分にのしかかるように立っている。やれやれ、アプローチのしかたを間違えたようだわ。
 リリーは彼のジャケットの裾を引っ張った。「脱がないの?」
 ブルーノはジャケットを脱ぐと、靴とソックスも脱いで放った。それからTシャツを頭から脱ぐ。リリーは、思い描いていたセクシーな体が次々と目の前であらわになるのをうっとりと眺めた。暗闇のなかでも、筋骨たくましいのがわかる。彼はベルトをゆるめてジーンズをおろし、足を抜いて立った。男性自身がこちらに向かって突きだしている。
 まわりの女性同様、欲望と好奇心のかたまりだったリリーは、これまでにたくさんの男性自身を見てきたが、これほど立派なものははじめてだった。別に大きいのが好きだというわけではないけれど、それにしても……すごいわ。
 彼女がじっくり見て尻ごみするまで、ブルーノは挑発するように黙ったまま足を広げて立っていた。
「触れてくれ。本当にこれがほしいなら」
「わたしの手は氷みたいに冷たいわよ」
「じきにあたたかくなるさ」
 リリーはおずおずと両手をあげた。ブルーノがその手をつかんで自分の高まりを包む。ふたりは同時にあえいだ。ブルーノは冷たさに。リリーは熱さに。最高だわ。彼のものは大きくてかたくなっている。彼女の腿に力がこもった。
 全身がこわばり、肌が張りつめる。ブルーノが頭をのけぞらせた。リリーはその喉にキスをしたかったが、彼の手の力が強くて自由に動けなかった。ブルーノの手は彼女の手を包んだまま、男性自身をゆっくりと愛撫している。
 静かだった。聞こえるのは、夜明け前の街の音とふたりの荒い息づかい、そして彼の高まりを愛撫する音だけだ。思っていた以上に激しかった。興奮のあまり息が苦しくなり、脚のつけ根に力が入る。リリーは片方の手を引き抜き、彼のヒップをつかんだ。そして引きしまった脇腹に爪をくいこませ、自分のほうに引き寄せた。彼のなめらかで塩からい味を楽しみたかった。
 彼女は顔を近づけたが、ブルーノの手にさえぎられた。「だめだ」
 リリーは不意をつかれた。口での愛撫を断る男性ははじめてだ。「だめですって?」
 ブルーノは彼女の顔を押さえて自分から離した。「おれがだめと言われたのだから、きみだってだめだ。お互いが同等であること。それがセックスのときのおれのモットーだ」
「冗談でしょう」
「公平にしよう。妥協はなしだ。やるかやらないか、選んでくれ」
 リリーは脈打つ男性自身を強く握った。「やるわ」