立ち読みコーナー
目次
416ページ
登場人物紹介
ジョーン(ジョー)         イングランドの治療師・助産師の娘
キャンベル(キャム)・シンクレア  スコットランドの領主の長男
ロス・マッケイ           スコットランド領主
アナベル・マッケイ         ロスの妻
ペイトン              ロスとアナベルの長男
アネラ               ロスとアナベルの長女
ケンナ               ロスとアナベルの次女
アルテア・シンクレア        スコットランド領主。キャムの父
バーナス・シンクレア        キャムの母
フィノラ・マクファーランド     キャムの花嫁候補
ガリア・マコーミック        キャムの花嫁候補
ミュアライン・カーマイケル     キャムの花嫁候補
サイ・ブキャナン          キャムの花嫁候補
エディス・ドラモンド        キャムの花嫁候補
P.74~
 ジョーンは眠たげに体を動かし、温かさと心地よさに微笑んだ。彼女が選んだ地面はでこぼこだったが、今は昨夜横になったときに感じたよりもやわらかい気がする。冷たく湿った地面で寝たせいで、冷えていくぶんこわばった体で目覚めるはずが、温かくて……ゆっくりと上下に動いていると気づき、彼女はぱっと目を開けた。
 あたりは真っ暗で一瞬混乱し、頭を起こすと、頭と肩に何かが当たった。わけがわからないながらも、どうやら何か布のようなものがかぶせられているらしいと気づき、ひどく動揺した。パニックを起こしかけたとき、いま触れた布がいきなり頭から引きはがされ、自分があるものを見つめていることに気づいた……これはだれかの胸? 呼吸のたびに上下している胸だ。だれの胸だかわかり、頭を起こすとキャムの開いた目を見つめていた。
 いったいどうして自分は彼の胸の上にいるのか尋ねようと、ジョーンは口を開けた。どうしてふたりが焚き火の同じ側にいるのかも尋ねたかったが、彼が痛みに顔をゆがめているのに気づき、心配になって「背中は?」ときいた。彼は仰向けに寝ていたからだ。
 キャムはすぐに反応し、片手を広げて彼女の背中を支え、もう片方の手で頭を支えながら、彼女を地面の上に寝かせると、今度は自分が上になった。彼がすばやく両手を移動させて両
肘で自分の体重を支えたので、ジョーンは彼が起きあがって体を離すつもりなのだろうと思ったが、彼は顔を寄せてきて唇を重ねた。
 ジョーンはその行為にぎょっとするあまり、一瞬身動きができなくなった。キスをするのは初めてではない。少女のころ、何人かの村の少年にされたことがあったが、あまり心躍る経験ではなかった。たぶんキスの相手によるのだろう。これまで経験したキスは、よだれまみれでおもしろみがなく、いつも手で口をぬぐいたくなるようなものだったからだ。でもこのキスはちがった。キャムは閉じた唇でジョーンの唇をなぞったかと思うと、下唇を軽くかみ、じらすように引っぱったので、ジョーンは驚いて思わず口を開いた。その瞬間、彼の舌が侵攻する軍隊のように口のなかにはいってきて、混乱をもたらし、彼女の体のさまざまな箇所に火をつけた。
 こんな経験は初めてで、あまりに圧倒されてしまったので、キャムにキスされていると気づいたのはしばらくしてからだった。彼がキスしているのはジョーンだ……そして彼はジョーンを男の子だと思っている。ジョーンはいきなり目を開け、彼の胸を押しあげて、唇を離そうとした。それでもキスから逃れることができなかったので、きっぱりと頭を横に向けた。これはうまくいった。少なくともキスを解くことはできた。だが、唇に逃げられると、キャムは頰から耳に向かってキスをはじめた。
「キャム、これは――」これはなんなのだろう? 思ってもいなかったようなやり方で、かんだりキスしたりして、彼が耳の探索をはじめるまえに、自分が言おうとしていたことを思い出そうとした。だめだ、思い出せない。でも彼がしていることはそれほどすばらしかった。経験したことのない快感の波のなかで、体の上から下まで興奮の震えが走った。
 もし教会がこのことを知ったら、まちがいなく武器を持って立ちあがるだろう、とジョーンは思った。こんなに気持ちのいいことを教会が許すはずがない。教会は楽しいことにことごとく反対するのだから。それに│そこで、さっき何を言おうとしていたのか思い出した。こんなことを教会が許すはずがない。結婚していないからというだけでなく、彼女は男の子なのだから。少なくとも、彼は男の子だと思っているはずだ。もちろん実際はちがうにしても、彼の意識としては男の子にキスしているわけで、ジョーンはそれを楽しんでいることでいくぶん気がとがめたが、彼が男だということはわかっている。裸の彼を見ているのだから。だが、思っていたのとちがって、彼女が男の子ではないと知ったら、彼はどんなにがっかりするだろう?
 ジョーンはろくに考えることができなかった。キャムが彼女のチュニックをゆっくりと引きあげ、乳房を平らにして変装の一助になっていた胸当てをあらわにしたことに気づいたからだ。おそらくこれはなんだと尋ねられ、心臓の鼓動の激しさに肋骨が折れるのではないかと思ったが、そうはならず、背中の肌に剣の冷たさを感じて、胸当てがいきなり取り去られた。間髪を入れずに彼の両手が伸びてきて、うずく乳房を覆い、つかんだりもんだりできるようにした。
 それほどがっかりしてはいないようね、とジョーンがくらくらしながら思っていると、いきなり仰向けにされ、キャムはチュニックを押しあげながら下の方に移動して、片方の乳首を温かな口に含んだ。
 なぜ彼はがっかりしないの? ジョーンはわけがわからなかった。少なくともぎょっとするはずでは? それに、どうしてこんなにいい気持ちなの?
 乳首を吸われ、体じゅうを跳ねまわっている興奮がすべてそこに集まって、ジョーンはうめいた。彼の膝が脚のあいだにあがってきて、ブレー越しに花芯に押し当てられるのを感じると、興奮はさらに高まった。そのため、キャムが急に顔を上げたときは、不満のうめきをもらしそうになった。彼はきいた。「ジョアン、それともジョセフィン?」
「えっ?」彼女はぽかんと彼を見つめた。
「きみの名前だよ」彼はまじめに説明した。「きみが少年ではないと知ってからはどうにかなりそうだった。これと思うあらゆる女の名前が頭のなかを通りすぎていくんだ。ジョーン、ジョエラ、ジョアンナ、ジョセリン、ジョ――」
「ジョーンよ」彼女はさえぎって尋ねた。「わたしが女だと知ってたの? どうして――?」