立ち読みコーナー
目次
440ページ
登場人物紹介

ジャクリン・ワイルド             ウェディング・プランナー
エリック・ワイルダー             刑事
マデリン・ワイルド              ジャクリンの母
ジャッキー・ワイルド             ジャクリンの父
キャリー・エドワーズ             ジャクリンのクライアントである花嫁
ショーン・デ二スン              キャリーの婚約者
フェア・メイウェル・ジョンストン・デニスン  ショーンの母
ダグラス・デ二スン              ショーンの父
ディードラ・ケリー              ジャクリンのアシスタント
ジョージア(ピーチ)・レイノルズ       マデリンのアシスタント、友人
グレッチェン・ギブソン            ドレスメーカー
ビショップ・ディレイニー           フラワーデザイナー
アンドレイ・ウィゼナント           パティシエ
アイリーナ                  ケータラー
エステファニ・モラレス            ベールデザイナー
メリッサ・デウィット             宴会場の支配人
テイト・ボイン                キャリーの友人
ニール                    警部補
ランダル・ガーヴィー             巡査部長
(42ページ) 
 いくら頭から追い出そうとしても、エリック・ワイルダーは頭の真ん中にでんと居座って動こうとしない。彼のすべてが気になる。彼の声も目も、それに、自分に嘘はつけないから言ってしまうと、彼の体も気になってたまらない。背の高さが好ましかった。広い肩も、なにもかもが。どこにいても目立つタイプの男性だ。法廷でもバーでも……それこそどこででも、彼女の視線を引きつける。ところがいまは、どんな種類のものであれ人間関係を築いて人生を複雑にすることだけは避けたかった。ロマンティックな関係であろうと、友人関係であろうと敵対関係であろうと――たとえ問題の男が、家に向かって車を走らせるあいだじゅう、彼女の頭のなかに居座っていようと。男性のことで思いわずらう暇はなかった。彼のことでも、男性一般のことでも。翌日の仕事の段取りを頭のなかでつけておく必要がある。彼女も母も、殺人的スケジュールの一週間に突入しようとしているのだから。しかもそこには、キャリー・エドワーズと、彼女にきりきり舞いさせられている哀れな業者たちとのミーティングも含まれる。キャリーの結婚式が終わったら、業者たちに謝らなければ。
 殺人的スケジュールをべつにすれば、男性と人生をともにする気持ちがないわけではない。実を言えばそうしたい。ひとりで生きていくつもりはなかった。いつか結婚して子どもを産みたい。長期の人生設計にそれは含まれている。いつか愛し愛される相手を見つけ、ふたりの人生を築いて子どもをひとりかふたり儲け、一緒に年老いてゆきたい。最初の結婚には失敗したけれど、男性を諦めたわけではない。以前より慎重になっているだけだ。オーケー、たしかに慎重になりすぎている。でも、いつか……
 けれどエリック・ワイルダーは“いつか”ではなくて、“いま”の話で、いまは手いっぱいだった。彼のような男には時間を取られる。一緒に過ごした時間は一時間にも満たないけれど、直感的にわかった。女性の関心が自分だけに向けられるることを求めるタイプではなさそうだが、彼が発するすさまじい力は、リビングルームにいる象のように、とても無視できるものではない。今夜の彼はとてもお行儀がよかったからといって、礼儀正しい見かけの下に潜む力に気づかないわけにはいかなかった。だいたい意気地がなくておとなしい人間は警官にならない。それに、警官は非番の日でもいつ呼び出しがかかるかわからず、勤務時間は長くて不規則だから、警官と付き合うならその仕事も受け入れなければならない。医者と結婚するのとおなじだ。エリックにまわりをうろうろされたのでは、彼女の日常生活はめちゃくちゃになる。
 彼にならめちゃくちゃにされてもかまわない気がしないでもない。
 馬鹿言わないの!