熱くて甘い毒入りのインクで――。
木爾チレンが描き出す、少女たちのこの残酷な
きっと、読む者の心に属性を超えて突き刺さり、
その深みを掻き乱すだろう。
――綾辻行人
この小説は私の黒歴史であり、これからの黒歴史になるだろう。(著者)
辛い現実を生きられなかった少女たちが、誰にも言えない恋に縋ったゆえの、禁断の黒歴史ミステリ。
最愛の父は、エベレスト登頂間際で猛吹雪に巻き込まれ凍死した。学校では陰湿ないじめを受け、家に帰れば義父に性的暴力を振るわれる。
氷織の唯一の生き甲斐はアイドル・四宮炭也の推し活だけだった。だが感染病流行によって推しのライブが中止になったことをきっかけに、氷織は推しの「なりきり」とのやりとりにのめり込むようになる。顔を見たこともない相手への恋――。それがすべての悲劇の始まりだった。
前作『みんな蛍を殺したかった』に引き続き、「女による女のためのR-18文学賞」優秀賞受賞者である著者が、少女たちのこころの中に巣くう澱みを鮮烈な感性で抉り出す。

『私はだんだん氷になった』(二見書房)
【著者紹介】
木爾チレン(きな・ちれん)
京都府出身。大学在学中に応募した短編小説「溶けたらしぼんだ。」で、新潮社「第9回女による女のためのR-18文学賞」優秀賞を受賞。美しい少女の失恋と成長を描いた『静電気と、未夜子の無意識。』(幻冬舎)でデビュー。その後、少女の心の機微を大切に、多岐にわたるジャンルで執筆し、作品表現の幅を広げる。近著に、『これは花子による花子の為の花物語』(宝島社)がある。黒歴史と少女の淀みを描いたミステリ小説『みんな蛍を殺したかった』に続くのが、本作『私はだんだん氷になった』である。
未知の領域に足を踏み入れてしまいました。知ってはいけないことを知ってしまった気分です。まさか、こんな結末が待っているなんて――。「黒歴史」という新たな小説のジャンルが確立しました。
(小説紹介クリエイター・けんご)
なかなか重量感がすさまじいと感じました。ただ、終始真っ暗ではなく、その暗闇の中に、救いも希望も、光も確かに見えた、氷のような美しい作品でした。
(未来屋書店 石巻店・成田開生)
――あの頃、黒歴史を積み重ねたすべての私たちへ。
澄み切った氷になることは償いで、救済で。それはとても残酷だけれど、同時に美しいとも思いました。心を抉られながら、しかし凍りゆく彼女たちに祈りを捧げずにはいられません。
(うさぎやTSUTAYA 宇都宮東簗瀬店・猪俣)
凍てつくような痛みの中に、差し込む光、ゾッとした分、ホッとした。刺激だけに終わらせない物語を、またもや読んでしまった。
(未来屋書店 高の原店・元尾和世)