芥川賞はまことに奇妙な文学賞である。
『火花』は? 『太陽の季節』は? 最高偏差値は?
第1回から最新回まで164作をランク付け! 掟破りの日本文学史
お前の判断基準は何なのだ、と問われるかもしれない。かねて言っている通り、文学にせよ音楽、美術、演劇にせよ、普遍的で科学的なよしあしの判断というのはできない。ただ多くの古典的なものや批評を自分で読んだりして、自己の責任で判断するものだ。もちろんその際に、さまざまな批評用語(これは「批評理論」のことではない)を用いて弁論するのは当然のことだ。しかし、ここで必要なのは「対話的精神」である。自分がよくないと思った作品でも、他人がいいと言ったら、その言に耳を傾ける必要がある。
(本書「まえがき」より)
【著者紹介】
小谷野敦 こやの・あつし
1962年(昭和37)茨城県生まれ、埼玉県育ち。東京大学文学部英文科卒業、同大学院比較文学比較文化専攻博士課程修了、学術博士(比較文学)。大阪大学言語文化部助教授、国際日本文化研究センター客員助教授などを経て、文筆業。2002年、『聖母のいない国』でサントリー学芸賞受賞。著書に『悲望』『童貞放浪記』(共に幻冬舎文庫)、『文章読本X』(中央公論新社)、『弁慶役者 七代目幸四郎』(青土社)、『本当に偉いのか あまのじゃく偉人伝』(新潮新書)、『ヌエのいた家』(文藝春秋)など多数。